2019年09月01日
大規模災害に備える1週間分の食料備蓄例 ~家庭でできる防災対策
【おとな2人分、1週間分の備蓄食料例 イメージ】
こうして見るとたくさんの量に思えるが、普段家にあるようなものが多いので、
買い足しが必要なものはそれほど多くない
「普段食べているものをベースに備蓄、備蓄食品を日常の食事にも取り入れる」
全国で料理教室を開催するベターホームでは、緊急時に備えて家庭での備蓄として推奨されている「1週間以上の水や食料」の目安として、「常温で保存できる食品を、そのままもしくは簡単な調理で食べて必要な栄養をとる」という考えのもと、目安となる食品のリスト(おとな2人分)と、備蓄食品を使った調理例を2013年に発表しました。このたび、備蓄リストと調理例の見直しをしました。考え方のベースは変わりませんが、備蓄リストには調理不要で食べられるものや、より手軽な調理で食べられるものを増やし、水や熱源を節約して作れる料理を研究し、レシピとコツをまとめました。
ベターホーム協会では、9月1日の防災の日を、家庭での食料備蓄と災害時に食について考える機会にしていただきたいと考えております。
1.備蓄する食品の選び方
[ポイント1:日常使いしている食材の中で、常温で日持ちするものをリストアップ]
・備蓄用にと特別に買い揃えずとも、缶詰、インスタント食品、パスタ類、基本調味料、乾物、根菜類など、家にある日持ちする食材は案外多いもの。災害時、冷蔵庫が使えないことを前提に、家族が1週間生命をつなげる最低限の食材のストック分として数を補充し、その他必要なものを買い足す。
・災害直後は、電気・ガス・水道などのライフラインがとまることを想定し、火や水が使えない状態でも食事ができるよう、常温保存ができ調理しなくてもすぐに食べられる食品を多めに用意する。
・備蓄する食品は、特別なものではなく、普段食べている銘柄のものがおすすめ。災害時は不便な生活を強いられ、緊張感も高いため、なじみの味や食材が心身ともに活力源となる。
[ポイント2:不足しがちな栄養がとれる代用食品を考える]
常温で日持ちするものに限ると、緑黄色野菜に多いビタミンAやビタミンC、肉や魚から摂取できるたんぱく質の不足が心配される。ビタミンAやCは野菜ジュース、果物のジュース、缶詰など、たんぱく質は肉や魚の缶詰、肉や魚を使ったレトルト食品、豆や高野豆腐などの植物性たんぱく質を、意識的に備蓄リストに加える。
[ポイント3:家族の年齢や嗜好を考慮する]
災害時は不便な生活と緊張感で食欲が落ちがち。しかし、必要な栄養をとらないと、体が弱ってしまう。高齢者や子どもは特に注意が必要。また、乳幼児や高齢者、食物アレルギーがある方などのケアが行き届かない可能性が高い。それぞれの家庭に合わせたストックを自分で用意することが必要。
2.備蓄食品の保存と補充
[ポイント1:目につくところに保存し、使ったら補充]
・普段使っているものをストックするという考え方なので、しまいこまずにキッチンなどに保存する。水など場所をとるものでキッチンに保存するのが難しい場合は、賞味期限を普段確認できる場所にメモしておくとよい。
・1つ使用したら1つ補充するようにする。
[ポイント2:めったに使わない食品は食べる日を決める]
レトルト食品や缶詰などを普段使わない人は、数か月~1年に1回、食べる日を決めて入れ替えるようにしても。
3.災害時の調理について「簡単な調理も想定」
1週間となると、すぐに食べられる味付け済みの調理加工品だけを食べていては、塩分のとりすぎに。また、味が濃いので喉がかわいたり、飽きたりしてしまいます。そのため、簡単な調理をするという想定が必要です。味付け済みの缶詰や、インスタントラーメン、レトルト食品に加え、粉類や麺類、魚介類やささみ、大豆の水煮缶など、調理に使う食材も備蓄しておきましょう。
[ポイント1:カセットコンロとボンベは必ず常備]
・電気もガスも使えない時は唯一の熱源としてカセットコンロは欠かせません。カセットボンベの予備とともに備えておきましょう。温かい食べ物は生きる活力にもなります。
・カセットコンロとボンベにも使用期限があります(コンロは10年程度、ボンベは6~7年)。チェックしておきましょう。
【カセットボンベは大人2人で、6~9本が目安】
[ポイント2:水や火をできるだけ使わない工夫を]
・水も限られているため、洗いものを減らすよう効率よく調理する。ひと鍋で作れる料理を。スープやみそ汁にパスタやもちなどを入れると、炭水化物もとれる。
・ふたがぴったりできて、熱伝導がいい鍋を使う(ステンレスよりアルミ)
【用意すると便利なもの】
・キッチンばさみ:ちょっとしたものはキッチンばさみで切れば、包丁とまな板を使わなくてすむ。
・ポリ袋:あえものなどをポリ袋の中で作れば、洗いものが少なくなる。
・高密度ポリエチレン製の厚手のポリ袋:耐熱性に優れた素材で、ごはんを炊くなどの湯せん料理が可能。
・ラップ・アルミホイル:食べるときは、食器にラップやアルミホイルを敷いて、洗わずにすむようにする。
・使い捨ての調理用手袋:衛生的に調理ができる。
【おとな2人分、1週間分(2人分×21食)の備蓄食料例】
・冷蔵庫が使えないことを想定し、すべて常温保存が可能な食品です。使用中+予備をストックしておきましょう。
・熱源としてカセットコンロを使うことを前提としています。カセットボンベの予備とともに備えておきましょう。
・家族の人数、年齢、活動量、嗜好などを考慮して調節してください。
水 | 2リットルのペットボトル14~21本程度 | ・1人1日最低2リットル必要。3リットルあると安心です。 | |
主食 | 調理が必要なもの | 無洗米1袋2kg以上、真空パックのもち8個、スパゲティ・パスタ類300g×2袋、小麦粉またはホットケーキミックス小1袋(500g) | ・乾パンや、ロングライフのパンなども可。 ・主食は普段食べているものを中心に考えれば買い足すものはそれほど多くない。 ・食欲がない時や体調不良時、おかゆがあると安心。 ・小麦粉は、チヂミやすいとん等に調理できる。 ・アルファ化米は長期保存可能で水か湯で戻して食べられる。 |
すぐに食べられるもの | レトルトおかゆ4パック、カップラーメンまたはインスタントラーメンうどんなど4個、パックごはんまたはアルファ化米2袋(500g) | ||
野菜、果物 | 常温 | じゃがいも等のいも類2~3個、たまねぎ2~3個、ねぎ、にんじん2~3本、だいこんなど切らさないようにする。 | ・いずれも常温保存できる野菜。 ・普段使っている野菜を切らさないようにすると活用できる。 |
缶、レトルト | トマト水煮缶2缶、コーン缶2缶、パスタ用和風きのこソース(レトルト)2袋 | ・パスタ用きのこソースは、調味料としても役立つ。 | |
乾物 | 切干大根1袋、スライス干ししいたけ1袋、乾燥ねぎなど乾燥野菜を利用しても。 | ・野菜の乾物は戻し汁も利用できる。 | |
果物他 | 野菜ジュース14缶(トマトやにんじんベースのものが料理には使いやすい)、フルーツ缶4~5缶、バナナほか旬の果物適量 | ・野菜の乾物の戻し汁も利用できる。 ・野菜が摂取しにくいので野菜ジュースで補う。煮込みや雑炊にも活用できる。(開封後残っても冷蔵できないので、飲みきり量の缶がよい) ・パスタ用きのこソースは、調味料としても役立つ。 ・常温保存できるバナナやりんごなどは普段から常備しておくとよい。 |
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肉類 | 缶詰 | ミートソース缶2缶、コンビーフ缶(ソーセージやランチョンミートでも)組み合わせて3~4缶、焼き鶏缶(※塩味は洋風にも使える)、鶏ささみ水煮缶(サラダチキン缶や常温保存できるサラダチキンパウチのものでも)組み合わせて6缶(6袋) | ・生鮮の肉は常温保存できないので、缶詰やレトルト食品で補う。 ・缶詰は1回で食べ切れる小さいサイズがおすすめ。 ・レトルト食品は食べ慣れた味のものを用意しておくとよい。 |
レトルト | レトルトカレー、牛丼の素、麻婆豆腐の素など肉入りのレトルトパック計6~8袋程度 | ||
魚類 | 常温 | 魚肉ソーセージ4本、鮭フレーク1瓶 | ・あさりやホタテ水煮缶は缶汁を麺類、ごはん等にだしとして使える。 ・ツナ缶は油も栄養が豊富。旨味もあり、サラダなどにそのまま使える。 ・蒲焼缶はそのまま食べる他、野菜と炒めると栄養バランスも整う。 |
缶、レトルト | ツナ缶4缶、魚の水煮缶(さば、鮭など好みで)4缶、魚の味付き缶(蒲焼、みそ煮など好みで)4缶、あさり(ホタテ、かになど好みで)水煮缶2缶 | ||
おでん(レトルト)2食分 | |||
乾物 | かつおぶし(ミニパック)4袋、桜えび1袋、食べる小魚1袋 | ||
海藻 | のり1袋、海藻サラダやカットわかめ1袋、とろろ昆布1袋 | ||
大豆・豆製品 | 常温 | ロングライフ豆乳200ミリリットル×4本 |
・豆乳は飲みきりサイズがよい。 |
乾物 | 高野豆腐1袋 | ||
缶 | 大豆缶2缶、ミックスビーンズ2缶、豆甘煮缶2缶 | ||
乳製品 | ロングライフ牛乳200ミリリットル×4本、スキムミルク(スティックタイプ)1箱、粉チーズ1本 | ・飲用他、スープやパスタに。 ・ロングライフ牛乳は常温保存可能だが、スーパーなどでは冷蔵コーナーに保存されていることが多い。 ・スキムミルクは袋入りもあるが、個包装になっているスティックタイプがおすすめ。 |
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汁もの | インスタントスープまたは即席みそ汁6食分 | ・温かい汁ものは欠かせない。 | |
その他 | シリアルやクラッカー1袋、水煮うずら卵1袋、梅干し4~5個、春雨1袋、いりごま・麩など1袋、ジャム1瓶 | ・各家庭で日頃からよく使う食材が活躍する。使用中+予備1単位(左記)ストックしておく。 | |
調味料 | 基本調味料各種、サラダ油、オリーブ油、ごま油、みそ、マヨネーズ、すし酢、ぽん酢しょうゆ、めんつゆ、スープの素等 | ||
嗜好飲料 | スポーツドリンク、お茶類、ジュース、コーヒーなど | ・甘い物や嗜好飲料は気持ちを落ち着かせる。間食の用意も大切。 | |
間食 | チョコレート、クッキー、キャラメル、みつ豆缶、ナッツ類、羊羹、常温保存可能なゼリー等 適宜 |
【備蓄食料の主な調理例】
[主菜、主食] いずれも鍋ひとつで調理可能 |
・さばの具だくさんみそ煮/ さば缶、ねぎ、いも、にんじん、大根などの野菜、みそ ・ツナクリームパスタ/ツナ、たまねぎ、LL牛乳、パスタ ・ポテトとパスタのトマト煮/じゃがいも、マカロニ、トマトジュース、ソーセージ缶など ・ポテトとマカロニのミートソースがけ/じゃがいも、マカロニ、ミートソース缶 ・ポテトバーグ/コーンビーフ、じゃがいも、コーン缶 ・蒲焼(焼き鳥)丼/ごはん、スライスたまねぎ、蒲焼缶(または焼き鳥缶) ・蒲焼缶(または魚肉ソーセージ)とたまねぎの炒めもの ・大豆とツナの落とし焼き/大豆水煮、ツナ、たまねぎ、小麦粉、みそ ・混ぜるだけ鮭ちらし/ごはん、鮭フレーク、すりごま、コーン缶、すし酢 |
[副菜] | ・ツナと切干大根のサラダ/ツナ缶(油ごと)、切干大根、ポン酢 ・切干大根のみそ汁/切干大根(戻し汁をだしがわりに) ・切干大根とあさり缶の炒め煮/切干大根、あさり缶(汁ごと使う) ・麻婆高野豆腐/高野豆腐、麻婆豆腐の素(レトルト) ・豆とソーセージのサラダ/ミックスビーンズ缶、魚肉ソーセージ、たまねぎ |
[即席汁] | ・小町麩、とろろ昆布、かつおぶし、乾燥ねぎに湯をそそぎ、しょうゆを加える。 |
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・缶詰や乾物を活用した火を使わないかんたんレシピ
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ポリ袋でごはんを炊こう
沸騰後1~2分で完成!水戻しパスタ
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・インスタント食品
・レトルト食品
・野菜ジュースほか
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・水
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