ベターホームの道具と食品

【連載・わたしのみそ作り】番外編 教えて!地域のみそ~豆みそ

この連載では、ベターホームの先生・スタッフ計9名の「みそ係」が、自宅でみそを作る様子をご紹介しています。これまでの目次はこちらから→

番外編「教えて!地域のみそ」をお届けしています。今回は、名古屋の天むす先生に、地域のみそについて教えてもらいます。聞き手は事務局スタッフのぱせりです。


名古屋グルメは豆みそグルメ

「名古屋グルメと言えば、赤みそですね!みそカツ、みそ煮込みうどん、みそおでん・・・全国のみその中でも、特徴をいちばんはっきり思い浮かべられます!」

 

「『赤みそ』というと、仙台みそや、前回あんみつ先生が紹介していた江戸みそなど、茶褐色のみそ全般を指すのですが、私たちの住む地域のみそのいちばんの特徴は、豆こうじを使うことです。総称としては『豆みそ』と呼ばれます。米みそは米こうじと大豆と塩、麦みそは麦こうじと大豆と塩で作りますが、豆みその材料は、大豆と塩だけです



大豆と塩だけで作る長期熟成みそ

「豆みそはどんなふうに作るんですか?」

 

 

「製法が特殊なので、個人で手作りするのはなかなか大変だと思います。作り方をかんたんに説明すると、大豆を長時間蒸して、蒸し上がった大豆をつぶして丸め、こうじ菌をまぶします。気温30℃前後と90%の湿度を保って、3~4日で豆こうじが完成。豆こうじに塩水を仕込み、重石をのせて1年~3年ほどねかせて作ります

 

「色は黒に近い茶褐色ですね」

 

 

「熟成期間が長くて水分が抜けているので少しかためです。辛口に感じますが、塩分濃度は11%前後なので、高くはありません。大豆の濃厚なうまみが感じられるみそです。豆みそは愛知県、三重県、岐阜県が産地。戦国時代、風味のよさ、長期保存ができること、携帯ができることから、大事な兵糧(ひょうろう=戦の時の食料)で作るのに許可が必要だったそうです

仙台みそが昔、兵糧として重宝されていたと先日教えてもらいましたが、豆みそもなんですね!」

 


八丁味噌ってどんなみそ?

「豆みその中では、『八丁味噌』が有名ですが、ご存知ですか?

 

 

「はい!先日、江戸甘みそを買った時に、色が似ていたので一緒に買って食べ比べてみました。とっても濃厚なうまみで、かすかに酸味と苦味も感じる複雑で奥深い味! 江戸甘みそは、米みそだということもありますが、うまみはしっかりあるけどスッキリとした味だったので、対象的だなと感じました」

「八丁味噌の名前は、徳川家康の生地である岡崎城より西へ八丁(約870メートル)の距離にある八帖町(旧八丁村)で作られたことに由来します。老舗の2件『カクキュー』と『まるや八丁味噌』が、八丁味噌の名を使っています」

 

「大きな木樽に仕込んで、上に石を積み上げている仕込みの写真を見たことがあります!」

 

 

「昔ながらの製法を守って、自然醸造されています。醸造期間は“二夏二冬“と言われるのですが、1年半~2年以上の長期熟成です」

 

 

「長期熟成によって、奥深い味になるんですね」

 

 

「我が家の近所のスーパーには、八丁味噌のほかにも、三州みそ、名古屋みそ、赤みそなどいろいろな名称の豆みそが売られているんですよ」

 


赤だしみそって何?

「百貨店のみそ売り場に八丁味噌と並んで『赤だしみそ』というのも売られていたのですが、これはどんなみそですか?」

 

「多くは豆みそに米みそや調味料(だし)を加えた調合みそのことを言いますが、豆みそのことを『赤だし』と呼ぶ地域もあり、だしが入っていないものもあります。だし入りの調合みそは、かたい豆みそにだしを混ぜることで、やわらかく使いやすくする目的もあったようで、東海地方では広く流通しています。だしの量が少なめなので、みそ汁を作る時はだしをとってから、赤だしみそで味をつけるのが一般的です。だしをたっぷり加えてだしいらずで使えるようにした『だし入り赤だし』もありで、ちょっとややこしいので表示をしっかり見て買うといいですね」


合わせて使ってもおいしい

「ところで、個性の強い豆みそに親しんでいる天むす先生は、ベターホームのレシピで作った米みそにすんなりなじめましたか?」

 

「はい、おいしくいただいていますよ! 豆みそも常備しているので、合わせて使うことも多いです。あわせる分量で味わいが変わるのが楽しいですよ

 

「みそ汁をその日の気分でブレンドしてみる・・・なんていうのも楽しそうですね」

 

 


東海グルメは豆みそグルメ

「冒頭で名古屋グルメを挙げましたが、ほかにも豆みそを使った料理を教えてください」

 

 

「郷土料理がいろいろあります。岐阜県の飛騨高山地方の『朴葉(ほおば)みそ』はみそに薬味やきのこ、山菜などをあわせて朴の葉にのせて焼いたもの。名古屋の『どて煮』はこっくりとしたもつ煮。ちょっとめずらしいところでは、川魚のふなと大豆をみそ味で煮た『ふなみそ』も。どれもごはんによく合います

 

「ごはんと言えば中部地方の郷土料理『五平餅』もそうですね!」

 

 

「豆みそを使ったお菓子もたくさんあるんですよ。おせんべい、カステラ、おまんじゅう、蒸しパン、ういろう・・・。うまみが強くて、加熱しても風味が飛びにくい豆みそは、隠し味に使う人も多いんですよ

 

「カレーや煮ものに加えるとおいしくなるって聞いたことがあります。今度試してみます!」

 


ぱせりの豆みそまとめ

「大豆の強いうまみと、長期熟成で醸し出される奥深い味わいは、唯一無二なキャラクター。たっぷり使って東海地方のご当地グルメを味わうもよし、隠し味として活用するもよし! 豆みそについて考えていたら、どうしてもみそカツが食べたくなって、近くのお店で八丁みそを使ったみそカツ丼を食べてきました!」


ベターホームでは、毎年2月に手作りみその会を開催しています。教室で行うのは仕込みまでですが、天地返しなど手入れのことも丁寧に説明しますので、ひとりで仕込むのは不安という方におすすめです。みそ係の先生たちの多くも教室を担当!残りの日程が少なくなってきましたので、ご興味がある方はお早めに。
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みそ作りの手順を動画でご紹介しています
どんなふうに作るか、流れがよくわかります。

 

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