vol.2 糖質制限ダイエットの落とし穴
最近よく耳にする〝糖質制限ダイエット〞。糖質を断つ、あるいは摂取量を減らすダイエット法のことです。試したことがあるという方も少なからずいると思いますが、「継続するのはなかなか難しい」と感じませんでしたか?
[ 取材協力 ]
本田佳子先生
女子栄養大学栄養学部教授(医療栄養学)。管理栄養士。
胃袋の容量を満たしてあげる
体が食事で「満足した」と感じるには、まず胃袋の〝容量〞をある程度満たしてあげることが必要です。胃袋の容量は1.8Lほど。腹八分目と考えると、1.4~1.5L程度の容量の食事を摂ることになります。低糖質ダイエットでは、おいしいごはんやパスタが食べられないぶん、肉や魚をたくさん食べて満足感を得ようとしがちです。仮に胃袋を脂たっぷりのカルビの焼き肉で満たすとしましょう。エネルギー量のわりに容量が少ないので、ついつい食べすぎてしまうことになります。摂取エネルギーが同じ場合、糖質を減らすと、脂質の比率が増える傾向にあります。摂取エネルギーのうち、脂質が45%を超えると動脈硬化を起こしやすくなるというデータもあります。低糖質ダイエットには、こういった落とし穴があることもおぼえておきましょう。
一定量の糖質とたんぱく質で満腹に
野菜類は逆に容量のわりにエネルギーは控えめなので、胃袋を満たすにはもってこい。ビタミン・ミネラルも摂れるので、積極的に食べたいものです。ただし、野菜だけで空腹を満たすのもダメ。すぐにおなかがすいてしまいますし、そもそも食事から満足感を得るには、一定量の糖質とたんぱく質を摂る必要があるからです。焼き肉のシメに、ビビンバやクッパなどが食べたくなるのは、焼き肉だけでは糖質がたりないから。逆におにぎりだと、ふだんなら食べきれないほど多めのごはんがペロリと入ってしまうのは、たんぱく質がたりていないからだと思われます。大切なのはやはりバランス。1日の摂取エネルギーのうちの三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の配分は、炭水化物(主に糖質)がもっとも多く50~65%。たんぱく質13~20%、脂質20~30%がめやすとされます。
さらに、脳に「食事はたりていますよ」という司令がいくには少々の時間を要します。どんなに忙しくても5分、できれば15分以上はかけて食事をするようにしたいものです。なるべく皿数を増やして、箸を口に運ぶ回数を増やしましょう。また、咀嚼の回数が増えるよう、「かたいものを食べる」「大きめに切る」などもおすすめです(高齢者には配慮を)。
本来は医師の指導のもとで行うもの
糖質を制限することによって、体重をコントロールしやすくなること自体は確かです。実際、糖尿病の治療においては、糖質制限がよく行われます。しかし、それはあくまで医師の指導の元で行うことが前提の話です。vol.1でも述べたとおり、糖質を制限すると、頭がぼーっとするなど生活に支障をきたすこともしばしば。糖質制限ダイエットに関しては、さまざまな検証が行われてはいますが、まだまだ根拠に乏しいそう。アンバランスな食生活を長く続ければ、健康に影響を及ぼす可能性もあります。単に「やせたいから」という理由だけで、糖質を制限するのはやめましょう。
ダイエットは、中長期的に続けられる方法でなければ、たとえ一時的にやせてもリバウンドしてしまいます。コンビニ弁当ひとつをとっても、糖質を避けようと思ったら、半分以上は食べられません。社会生活を送るうえで、糖質を制限し続けるのは、かなり難しいのです。仮にチャレンジするとしても、糖質を完全に断つのは厳禁!1日の摂取エネルギーの最低でも40%程度は炭水化物から摂りましょう。さらに、まずは1週間程度続け、いったん元の食生活に戻す。その後、体調や体重をみながら1週間程度行うといった具合に、期間を区切って行うようにしましょう。
たとえばこんなメニュー
ヘルシーシーフードカレー
魚介の中では脂質が低いえびといかを使います。市販のカレールウは油分が多いので、カレー粉であっさりと。スープにナンをひたして食べるとおいしい!
材料
【2人分】
・いか(胴)…100g
・むきえび…80g
・ズッキーニ…100g
・ヤングコーン(水煮)…5本
・ りんご…80g
[ A ]
・たまねぎ…3/4個
・しょうが(すりおろす)…小1かけ(5g)
・にんにく(みじん切り)…1片(10g)
・トマト水煮(カット)…100g
・バター…10g
・カレー粉…大さじ2/3
[ B ]
・固形スープの素…1個
・水…250ml
[ C ]
・砂糖…少々
・塩…少々
・こしょう…少々
・ナン…2枚
作り方(1人分363kcal /糖質43.3g、塩分3.0g)
【1】
いかは1㎝幅の輪切りにし、えびは背わたをとる。
【2】
たまねぎは薄切りにしてラップに包み、電子レンジで3〜4分(500W)加熱する。
【3】
ズッキーニは5㎜厚さのいちょう切り、ヤングコーンは半分に切る。りんごは皮をむき、すりおろす。
【4】
厚手の鍋に半量のバターを溶かし、いか、えびを中火でさっと炒める。塩・こしょう各少々(材料外)をふり、汁ごととり出す。
【5】
残りのバターを鍋に溶かし、A(たまねぎ3/4個、しょうが(すりおろす)小1かけ、にんにく(みじん切り)1片)を中火で1分ほど炒める。[3]、トマト、B(固形スープの素1個、水250ml)を加えて混ぜる。ふたをずらしてのせ、10分ほど煮る。
【6】
いか、えびを鍋に戻してカレー粉を加え、2〜3分煮る。C(砂糖、塩、こしょう各少々)で味をととのえる。ナンを添える。
※当ページのコンテンツは、「月刊ベターホーム」本誌2017年7月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。