あの人に会いたい

水野仁輔 「AIR SPICE」代表

スパイスを覚えるにはスパイスカレーを入口にするのが一番!
絶対うまくいきますよ

暑い季節に食べるスパイシーな料理は格別だ。
でもスパイシー=辛いではないことをご存じだろうか。
知れば日々が豊かに変わる、スパイスライフを始めるコツをカレーの達人・水野さんに教えてもらった。

Profile
みずの・じんすけ/「AIR SPICE」代表。「カレーの学校」主宰。1999 年に「東京カリ~番長」を結成して以来、カレー専門の出張料理人として全国各地で活動するかたわら、さまざまなカレープロジェクトを立ち上げ、カレーの伝道師として活躍中。カレーに関する著書は50 冊以上、レシピ本、カレーショップ案内、歴史や文化に関するものなど多岐にわたる。http://www.airspice.jp/   ※外部のウェブサイトにつながります

スパイスのある楽しさを知ってもらいたいから
「AIR SPICE」は、水野さんが3年ほど前に始めたスパイスカレープロジェクト。”スパイスカレー”とは、本場インドのカレーのように複数のスパイスを配合して作る本格カレーの総称で、家庭で親しんできたルウカレーに対して近年使われるようになってきたものだ。

少しずつ愛好者が増えてきたとはいえ、まだまだ難しいと思われがちなスパイスを気軽に楽しみ、香りに慣れ親しんでもらうのがプロジェクトの目的。だから、本来なら企業秘密にするような配合も惜しげなく公開し、レシピつきのスパイスセットも定期頒布している。

「僕自身は”カレー専門の出張料理人”が本業というイメージなんです。ほぼ毎週末、全国どこかでカレーの出張料理をやっています」

カレーに関する著書は50冊以上を数え、「カレーの学校」やウェブの連載等で、カレーにまつわる情報を発信。インドには毎年足を運び、仲間とともにカレーのさまざまな実験を行ったりもしている。さらに、今年9月にはベターホームの渋谷・銀座・池袋教室でスパイスカレーの1日教室を開催する予定もあり、カレー活動に勤しむ毎日。まさに”カレーの伝道師”といっていい活躍ぶりなのだ。

スパイスカレーの第一歩におすすめの著書。右下はAIR SPICE「基本のチキンカレーセット」。

スパイスを抜いたカレーはおいしいシチュー
「スパイスは基本的にすべて植物です。植物のある部位を採取したもの、あるいはそれを加工したもので、料理に使うと香りがよくなるものを、ざっくりスパイスと呼んでいます」

乾燥したものや粉になったものだけでなく、広義ではハーブ類もスパイスに数える。和食でおなじみのしょうがやしそも、スパイスといっていい。また、”スパイシー”というと辛さをイメージするが、スパイスの役割は主に3つで、「香り」「色味」「辛味」をつけることにある。辛みのあるものは、こしょう、チリ(トガラシ)、さんしょう、マスタード、わさび、しょうがなど。色つけ目的で使われるのもターメリックやサフラン(黄)、チリ(赤)ぐらいだから、数あるスパイスの魅力の多くは香り。加熱によって温度が上がると成分が揮発して、香りや辛味が引き出されるのだ。そして、覚えておいてほしいこと。
「ここが大事なんですが、スパイスでは味はつきません。素材から出たうまみと調味料が味になるんです。そこにスパイスの香りが加わることで、味をいっそう引き立てるんですよ」

おいしいチキンカレーからスパイス成分をすべて抜いたら、残るのはおいしいチキンシチュー。おいしさに変わりはない。脇役に徹し、香りでサポートするのがスパイスなのである。

スパイスカレーから始めよう
「普段作っている料理にワンスパイス追加しましょう、といったアプローチは、実は結構難しい。香りは好みなので、自分は好きでも一緒に食べてくれる人には合わないかもしれないから。でも、カレーを作りましょうといったときに、スパイスは使わないで、という人はいませんよね。だから”スパイスライフ”の入口はやっぱりカレーがおすすめ。香りや、入れるタイミングを覚えるうちに、他の料理にも使ってみよう、となるんです」

しかも、最近水野さんが編み出した「スパイスパズル」(下写真)の手法を使えば、子どもでも本格的なスパイスカレーの調合ができるという。一定のルールに従って4×4のマスを埋めていくと、4人分のカレーに必要な小さじ8のスパイスが調合できる仕組みだ(詳細は著書『スパイスカレーを作る―自分好みのカレーが作れるメソッド& テクニック』〈パイインターナショナル〉で紹介)
「複数のスパイスが混ざって加熱されると、おいしいシチューがカレーになる。そこが不思議でおもしろい。みなさんにもぜひ楽しんでもらいたいですね」

水野さん考案の「スパイスパズル」。組み合わせは数百万通り!「すべてがいい香りに仕上がります」
これらはすべてシナモン。「産地や品種、部位でも風味が異なるのがおもしろい」と水野さん。

撮影/ノザワヒロミチ 文/長井亜弓

※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2019年8月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

ベターホームのお料理教室の受講生向け会報誌「Betterhome Journal」

「おいしいって、しあわせなこと。」をキャッチフレーズに、 料理レシピや食についての情報を掲載しています。2019年7月号の特集は「うちのカレー」。夏になるとひときわ恋しくなるカレー。ベターホームの先生たちがふだん家で作っているカレーをもとにした6つのレシピと、おいしいアイディアを紹介します。

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