先生たちの社会科見学

佃煮専門店 鮒佐(ふなさ)

ベターホームの先生たちが教室を飛び出し、さまざまな食の現場を訪ねてレポートします。
見学するのは、渋谷教室 中村明子先生(写真左)、吉祥寺教室 田村敦子先生(写真右)

教えてくれるのは、鮒佐 五代目 大野佐吉さん

時代に迎合せず、初代の味を受け継ぐ
江戸時代から庶民の町として発展してきた東京都台東区浅草橋。ここに、文久2(1862)年に店を構え、今なお昔ながらの味を守り続ける佃煮専門店「鮒佐」があります。「佃煮の作り方も味つけも、一子相伝で受け継いできました。設備も、電気と排気のためのダクト以外は、創業当時とほとんど同じです。意図して何かを変えたことはありません」
そう語るのは、鮒佐の五代目、大野佐吉さん。「佐吉」という名前は初代のもので、これも代々襲名しているそうです。

作業場に入って目を引くのは、4つの火口がある大きなかまど。じっくり煮ると素材の風味も食感も失われてしまうため、薪の強い火力でサッと煮あげます。火にかけるのは20分程度で、甘露煮のような甘さのない、濃いしょうゆ味に仕上げます。

凛(りん)とした雰囲気のあるかまど。1988年に店舗や作業場を建て替える際、当時のかまどのつくりをメモしながら壊して、それを再現したそうです。道具も、昔から使っているものをメンテナンスしながら大切に使っています。
薪は火持ちのよい楢の木を使用。
くべる薪の太さや置き方、窓の開け方などで、火を調節し、鍋の中の状態をコントロールします。

この味の決め手となるのがたれ。前日に使ったものをこして、生じょうゆを加えて煮ていくことのくり返しで作られるたれは、素材のうま味をたっぷり含んでいます。しかし、「うま味の出るあさりを多く煮すぎるとたれは太り、使いすぎると壊れる」のだとか。いい塩梅で使うのが味を守る秘訣です。

煮るときに使うたれは、しょうゆをたしながらくり返し使います。関東大震災と第二次世界大戦で失いましたが、終戦後に新しくしてから現在まで使い続ける、素材のうま味が詰まった鮒佐の味。毎朝、木桶に入ったたれを「すくいだな」と呼ばれる裏ごし器でこして作業を始めます。
戦後から続く秘伝のたれ!
季節ものも合わせると8種類の佃煮を作っています。この日、煮たのは5種類。芝えびの長いひげをとったり、切り昆布を前日から浸水したり、海苔も箸でとったときにぼってりしないよう包丁を入れたりと下ごしらえをしてから煮ます。

佃煮を煮る手順
【1】鍋にたれを入れ、生じょうゆを追加

秘伝のたれを鉄鍋に投入!

【2】竹の「引きざる」をセットし、素材を入れます
【3】火加減を調節しながら、20分ほど煮ます

【4】アクをていねいにすくいます

 

【5】基本的に、味見もしなければ、時間も計らない佐吉さん。「味覚に頼ると、たとえば夏は汗をかくので、塩気を欲して濃い味つけになります。また、素材の状態やその日の気温、湿度で煮あがりは変化するので、時間もあてになりません」と。素材の色の変化と沸き立つ泡の細かさで、『ここだ』というポイントを見極め、引き上げます。

【6】引き上げるとすぐに大きなざるにあけ、まんべんなく広げて熱がさめたら完成。1つの鍋で1.5〜3.6kgを煮ることができ、この日は5種類で12〜13kg煮ました。

戦後、佃煮に適した素材が手に入らなくなり、鮒佐では佃煮の種類が半分以下に減りましたが、近年全国の素材を試して、こはぜや海苔を復活。今後も種類を増やしたいといいます。
「佃煮はそれだけで完結する食べものではなく、あくまでも脇役です。佃煮の味の余韻でごはんの甘さやお酒のうま味を感じる。うす味・減塩志向の現代ですが、初代が作りあげたものと一緒にそういう食文化を伝えていきたいですね」

江戸の心意気に触れ、先生たちも伝統や食文化について改めて考えた1日となりました。

できあがったばかりの佃煮を試食。素材を生かした昔ながらのキリッとした味わいに先生たちも感激。「白いごはんが食べたくなります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「短時間でサッと煮る。素材を活かしたその仕事ぶりが粋だなと思いました。」(田村先生)「古さを感じさせない昔ながらの道具。技と共に伝承していただきたいと感じました。」(中村先生)

 

昆布・ごぼう・あさり・えび・しらす・穴子は通年、 こはぜ・海苔は季節限定。単品は50gより量り売りで870円(税込)〜。5、6種類を詰め合わせた家庭用パックは1,180円(税込)〜。お使いもの用に、曲物や折詰もある。
写真は曲物、3 号4,250 円(税込)。肴やごはんのおともに最適!


【Data】
株式会社 鮒佐
東京都台東区浅草橋2-1-9
https://www.funasa.com
※外部のウェブサイトにつながります

Access
JR総武線 浅草橋駅東口より徒歩3分
都営地下鉄浅草線 浅草橋駅A4出口より徒歩1分

Information
【営業時間】 9:00~17:00
【定休日】 日曜日・祭日
【問い合わせ】
TEL:03-3851-7043・03-3851-7710
Fax:03-5687-0748

※表示の価格や内容量等は掲載日時点の情報です。掲載した時点以降に変更される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

撮影/安部まゆみ 文/横尾久美子

※当ページのコンテンツは、ベターホームのお料理教室の受講生の方のための会報誌「Betterhome Journal」2020年2月号掲載の内容を、Web記事として再掲したものです。

ベターホームのお料理教室の受講生向け会報誌「Betterhome Journal」

「おいしいって、しあわせなこと。」をキャッチフレーズに、 料理レシピや食についての情報を掲載しています。2020年2月号の特集は「腕まくりパスタ & お手軽パスタ」。3人に1人が週に1回食べているというパスタ。ちょっぴり手間をかけますが作りがいのあるソースが決め手の「腕まくりパスタ」と、経済的で手近な材料を使った時短レシピの「お手軽パスタ」を紹介します。暮らしのシーンに合わせて、お楽しみください!

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