●調査目的：高齢化社会の今、現役の仕事をしりぞいたあとも健康で充実した生活を送るのはすべての人の課題です。そのためには、まず健康的な食生活をおくらなければなりません。しかも、元気なうちは人に頼るのではなく、自分の食生活は自分で管理するだけの気概と能力が必要です。それは男女を問いません。
しかし、日本の中高年男性の実態を見ると、きわめてあやうい状態です。長いこと仕事中心の生活で家庭内のことにはノータッチ、重ねて「男子厨房に入らず」的な社会通念によって生活・家事能力の低い男性が目立ちます。それでは長く続く人生を充実させることはできません。
（財）ベターホーム協会では、このような中高年男性の生活面での自立をサポートする助成事業として９５年から「６０歳からの男の基本料理教室」を全国で開催しています。あわせて、６０歳以上の料理や家事の実態を把握するため同じ内容のアンケート調査を毎年実施しています。１回目を９５年に実施し、今回は３回目の９７年度版です。
●調査対象：ベターホームの料理教室を受講した男性１８９名
●調査地域：東京、大阪、名古屋、札幌、福岡
●年代構成：
| 全体 | ６０代 | ７０代 | ８０代 |
| １８９（人） | １４９ | ３５ | ５ |
| １００（％） | ７８．９ | １８．５ | ２．６ |
●職業構成：
| 全体 | 有職 | 無職 | 不明 |
| １８９（人） | ５６ | １２７ | ６ |
| １００（％） | ２９．６ | ６７．２ | ３．２ |
●調査時期：１９９７年７月
●調査方法：料理教室でアンケートを配布し、その場で記入してもらいました。
（注）質問の１． ３． ４．の９５年度分のデータは９５年の調査方法が違っていたため掲載しませんでした。
※ 以下の表の数字はすべて％です。
１．料理教室に入ろうと思ったのはなぜですか？（複数回答）
| | ９７年 | ９６年 |
| （１） | ひとりになっても困らないように | ６１．９ | ５１．０ |
| （２） | 妻の手助けをしたい | ４１．３ | ３１．８ |
| （３） | 定年を迎え、時間ができたので | ４１．３ | ４１．４ |
| （４） | 老化防止のため | ３５．４ | ３６．９ |
| （５） | 趣味のひとつとして | ３３．７ | ２６．８ |
| （６） | 家族にすすめられたから | ２０．６ | ３１．２ |
| （７） | その他 | ９．０ | ５．１ |
※「（１）ひとりになっても困らないように」が１０．９ ％上昇。この年代の男性の「ひとり」には２つの意味がある。ひとつは、妻が病気などで入院してしまったり、不幸にして亡くなってしまった深刻な場合。もうひとつは、趣味や旅行に活動的な妻が家をあけている日常的な場合。いずれにせよ、ひとりになっても困らないように準備をしようとする男性が増えたことは、自立志向が高まっているとみてよいだろう。
※「（２）妻の手助けをしたい」という人が９．５ポイント増加しているのも、妻に頼りきるのではなく自立しようという意志の表れか。
※「（５）家族にすすめられたから」という理由は１０．６％ダウン。家族（妻）にうながされて参加する人が減っているということは、自分で料理教室に参加することを決める人が増えているということであろう。
２．料理教室に入るのにためらいはありましたか？
| | ９７年 | ９６年 | ９５年 |
| （１） | なかった | ８１．５ | ７４．５ | ５９．４ |
| （２） | あった | １８．５ | ２５．５ | ３９．６ |
※料理教室に参加することにためらいを覚える人はこの３年で半減した。男性の意識が変わっているのがよくわかる。
３．「ためらいがあった」方は何が気がかりでしたか？（複数回答）
| | ９７年 | ９６年 |
| （１） | 料理ができないので、授業についていけるか不安だった | ８０．８ | ６７．５ |
| （２） | 男なのに料理を習うのは恥ずかしい | ３７．１ | ４０．０ |
| （３） | その他 | ５．７ | １０．０ |
４．現在、主に食事を作っているのは誰ですか？
| | ９７年 | ９６年 |
| （１） | 妻 | ８４．７ | ８６．６ |
| （２） | 自分 | ７．４ | １１．５ |
| （３） | その他（娘、息子の妻など） | ７．９ | １．９ |
※「（３）その他」が増加しているが、この中には、妻と交代で作っているという人が入っているための増加とみら れる。次回の調査では「妻と交代で作っている」という項目を追加する予定。
５．現在、あなたはどの程度、料理を作っていますか？
| | ９７年 | ９６年 | ９５年 |
| （１） | ほとんどしていない | ５２．９ | ５７．５ | ５３．７ |
| （２） | 月に２〜３回程度 | １９．６ | １３．７ | １３．２ |
| （３） | １週間に３〜４回程度 | １３．７ | １１．８ | ７．５ |
| （４） | １周間に１〜２回程度 | ６．９ | １３．１ | １０．３ |
| （５） | ほぼ毎日 | ６．９ | ３．９ | １２．２ |
※「（１）ほとんどしていない」人はこの３年であまり動きがない。調査対象がこれから料理を始めようという人たちなので、いたしかたない数字かもしれないが、もう少し減ってもらいたいものだ。
※ただし、「（３）１週間に３〜４回程度」という頻度の人は増加傾向にある。この程度料理をする人が増えているのは明るい傾向だ。
６．自分が家事をすることについて、どう思いますか？
| | ９７年 | ９６年 | ９５年 |
| （１） | 今はやっていないが必要なことなので、今後は積極的に取り組みたい | ５８．７ | ４９．７ | ４８．１ |
| （２） | 必要だとは思うが、やらなくてすむなら、やりたくない | １９．１ | ２２．３ | １９．８ |
| （３） | 当然のことだと思うので、今でもやっている | １４．８ | ２２．９ | １８．８ |
| （４） | その他 | ５．３ | ５．１ | ９．４ |
※「（１）今はやっていないが必要なことなので、今後は積極的に取り組みたい」という前向きな人は順調に増加している。
※しかし、「（２）必要だとは思うが、やらなくてすむならやりたくない」という本音派も根強い
７．これから身につけたいと思っている家事は何ですか？（複数回答）
| | ９７年 | ９６年 | ９５年 |
| （１） | 料理 | ８６．２ | ８９．８ | ９７．３ |
| （２） | 食品や日用品の買い物 | ３６．０ | ３５．０ | ２５．４ |
| （３） | 掃除 | ２４．９ | ２８．０ | １８．８ |
| （４） | 家や器具類の修理 | ２３．８ | ３０．６ | ２２．６ |
| （５） | 洗濯 | ２２．２ | ２５．５ | １６．０ |
| （６） | 食器洗い | １９．６ | ２７．４ | １６．９ |
| （７） | 家計の管理 | ８．５ | ８．９ | ６．６ |
※「料理」は漸減傾向ながら３年間、圧倒的に１位。食べることは健康の基礎であり、日々の楽しみであるから、やはり一番料理を覚えたい人が多いのだろう。
※２位が「買い物」であることも、３年間変わらない。「料理」と「買い物」が中高年男性の家事への入り口のようだ。
［そのほか、アンケートに記入されていた内容から］
《参加した理由》
- ● たまには朝食ていどの食事を作って「食事ができましたよう」と妻に声をかけてみたい。（６０代・東京）
- ● 釣りをしているので魚料理が知りたかった。（６０代・東京）
- ● 先月、妻に先立たれたので、ひとりになった。（６０代・東京）
- ● 家族の一員として当然と思い。（６０代・東京）
- ● 物を作る楽しみを味わいたい。（６０代・東京）
- ● ロングステイの旅行のため。（６０代・東京）
《参加にためらいのあった人》
- ● 「６０歳から」という限定があったので、ぜんぜん経験がなくても参加しようという気になった。（６０代・名古屋）
- ● 面倒くさい。できたものをデパートで買えばよいと思っていた。（７０代・大阪）
- ● 受講には勇気を要しましたが、やってみて本当によかったな、と思います。（６０代・東京）
- ● 未経験のため、心配だった。（６０代・東京）
《参加しての感想》
- ● 同年代の男性ばかりの教室で気が楽であった。（７０代・名古屋）
- ● 満足。楽しい。（６０代・大阪）
- ● 我流から脱却できそうです。今後もおおいに勉強したい。（６０代・大阪）
- ● 若干のためらいがあったが、受講して大変よかったと思う。原理原則からマスターできて、ありがたいと思った。（６０代・大阪）
- ● 家で料理ができない(妻の独壇場のため)ので、勉強になると同時に、楽しく過ごすことができた。（６０代・大阪）
- ● 米の洗い方、計量の仕方等、大変参考になった。楽しい雰囲気がとてもよかった。（６０代・大阪）
- ● 何もかも勉強になりました。我々男は理屈で動くところがあるので、なぜ繊維に直角に切るのか、なぜ塩を先に入れるのか、理屈をちょっと入れていただくと、うれしいです。（６０代・名古屋）
- ● 思いがけない料理の基本を聞いて驚いている。非常にためになった。（７０代・福岡）
- ● 非常に行き届いた説明で大変勉強になりました。とくに自分たちで作ったものがこうもうまい味（？）かと感激しました。（６０代・福岡）
◆ ９５年度の調査概要
- ＊調査対象 料理教室に受講を申し込んだ６０歳以上の男性１０６名
- ＊調査地域 首都圏、札幌、仙台、名古屋、大阪、京都、福岡
- ＊調査時期 １９９５年４月
◆ ９６年の調査概要
- ＊調査対象 料理教室に申し込んだ６０歳以上の男性１５７名
- ＊調査地域 東京、大阪、名古屋、仙台
- ＊調査時期 １９９６年７月
以上
|
